脱炭素先行地域のさいたま市と川崎市が初の交流会を開催

まるっとサステナキャンプ課外授業として、インターンがさいたま市大宮区役所を訪れ、国の「脱炭素先行地域」同士での交流会を行いました。さいたま市からは、芝浦工業大学の学生が参加し、同世代ということもあり、すぐに打ち解け、最後まで大いに盛り上がりました。

書いた人:まるっとサステナキャンプ公式

主に「まるっとサステナキャンプ」のインターンが行っている活動について記事で発信していきます。

まるっとサステナキャンプ課外授業ーさいたま市交流会ー

今回のイベントは以下のような流れで行われました。

  • さいたま市職員ご挨拶・取り組み紹介
  • 川崎市職員ご挨拶・取り組み紹介
  • 脱炭素アクションみぞのくち「まるっとサステナCAMP」活動紹介
  • 芝浦工業大学活動紹介
  • ワークショップ
  • ①「脱炭素に向けて考えたいこと、行動したいこと」
  • ②「さいたま市、川崎市の若者同志で、それぞれで連携してみたいこと」
  • さいたま新都心バスターミナル見学

さいたま市職員ご挨拶

さいたま市の脱炭素の取り組みについて、さいたま市環境局の山﨑静一郎さんより紹介がありました。

「2009年に、電気自動車(EV)を推進する『E-KIZUNA Project』がスタート。それをきっかけに環境に配慮した取り組みを進めるようになり、2019年にSDGs未来都市に選定されています。

さいたま市における脱炭素先行地域については、大学を中心に連携を図っており、芝浦工業大学のほか埼玉大学、企業では東京電力パワーグリッド埼玉総支社と協働しながら5つのエリアで地域の脱炭素を推進しています。

具体的な取り組みとしては、小中学校に太陽光発電設備や蓄電池を設置したり、ゴミ発電の活用など、基本的には再生可能エネルギーを地域で地産地消する取り組みを進めています。

また、地域共創エリア(美園地区)においては、スマートホーム・コミュニティ街区の整備なども行っています」

さいたま市と連携している東京電力パワーグリッド埼玉総支社の加々谷 真さんからも以下のような話がありました。

「東京電力グループでは2050年までにカーボンニュートラル社会の実現を目指し、様々な取り組みを行っております。東京電力パワーグリッドは一般送配電事業者として、首都圏の電力供給を担っており、高品質な電気を安定的にお届けするために、送配電網の建設・保守等を行っています。

再エネ電源の導入拡大については、送配電設備の設備最適化に取り組む一方で、地域のカーボンニュートラルの実現に向け、地域と共創しながら進めていきたいと考えています。太陽光発電は天気に左右され、発電量が変動してしまうので、電力需要に合わせて、火力発電や水力発電等様々な電源を組み合わせ利用しながら、需給バランスを維持しなければなりません。

ビルが立ち並ぶ都会に比べ、地方都市等の土地がある場所は、再エネの発電所を建設しやすいですが、送配電設備の対策コストが高くなる傾向があります。そこで、作った電気をその場所で使う再エネ電気の『地産地消』がキーワードになります。さいたま市でも、ごみ焼却施設で燃やした熱を利用して発電した電力を、出来る限り施設近郊、又はさいたま市内で消費する地産地消に向けて取り組んでおります。」

川崎市職員ご挨拶

川崎市環境局内田洋平さんからは、まず川崎市がどんな市か、そして脱炭素への取り組みについて話がありました。

「川崎市は今も人口が増加している大都市の中で平均年齢が若く、元気な都市です。その分、温室効果ガスの排出量も多く、人口当たりの割合が全国で1位となっています。そのうちの多くが企業で産業のためのCO2を排出していますが、市民からも脱炭素の対策をしていくことが大切です。

特に高津区溝口周辺は脱炭素モデル地区としてさまざまな取り組みをしています。まず、東急田園都市線は再生可能エネルギー100%で運行しています。JR武蔵溝ノ口駅はエコステーションになっていて、構内には水素電池を設置しています。また、少しでもペットボトルを減らすため随所に給水スポットが設置してあり、マイボトルに水を入れることもできます。

ほかにも、取り組みがたくさんありますが一番覚えていてほしいのは、『まるっとサステナフェスティバル』というイベントを予定しているということです。ぜひ若い人たちの視点からも脱炭素について発信していただきたいです。」

脱炭素アクションみぞのくち「まるっとサステナCAMP」活動紹介

まるっとサステナキャンプについては、インターンを代表して高橋淳音さんと田中悠太さんの2人からこれまでの活動、そして今後の取り組みの企画を紹介しました。

高橋さんはまるっとサステナキャンプに集まった個性あふれるメンバーや、脱炭素に関する知識を持つメンターの皆さんについて紹介。

「高校生から新社会人までのZ世代を中心にインターンは個性のあるメンバーが集まっています。これまで、専門家のメンターの皆さんによる授業や、企業訪問を行ってきました。今後は、それぞれが得意分野をいかして脱炭素への取り組みを実践していきます。私の場合は、アロマの製品を自分の会社で製造してますが、地元の柑橘を使用しているほか、捨てられてしまうはずのものを利用しています。例えば、マルイ溝の口店に設置されている、オレンジを丸ごとしぼるオレンジジュースの自動販売機の廃棄の皮をアロマにする活動もしてきました」

田中さんは、体験から得た感想を交えながらこれまでの勉強会や、イベントについて話しました。

「武蔵野大学准教授博士(地球環境学)であり、プロジェクトの環境メンターでもある明石修教授をお招きし、サステナビリティに関する講義をしていただきました。そこでは、既存の仕組みの中で環境に配慮した製品を選ぶことで脱炭素につながる行動が自分たちでもできるよね、と話し合いました。また、別の機会ではイギリスの環境NGOでサステナブルファイナンスの仕事をしつつ東京都環境局脱炭素アンバサダーなども務めている細谷優希さんから、脱炭素社会に関する基本について学び、身近にできる行動について話し合いました。ゼロカーボンアクションのために自転車を活用したり、マイボトルを持ち歩くのもすぐ実践できるという気づきがありました」

また、なないろ畑の訪問や、行動変容アプリを開発する富士通への訪問についても紹介しました。

芝浦工業大学活動紹介

芝浦工業大学からは、副学長でありシステム理工学部環境システム学科教授の磐田朋子博士より、お話いただきました。

「以前『まるっとサステナキャンプ』という取り組みがある事を知り、さいたま市でもこういったことができないかと考えていたので、このような交流イベントができてとても嬉しいです。

芝浦工業大学では、キャンパスでもカーボンニュートラルに向けてアクションプランの策定をしていますのでその取り組みや授業を紹介します。芝浦工業大学は学生数が多く、大宮キャンパスはガスも電気もかなり消費しています。これからはカーボンニュートラルにしていくために、太陽光発電システムを強化することや通学のバスをEVバスに変えていくなどのプランがあります。

今後は、再エネ電力をどう調達するかが大きな課題です。もちろん、購入することもできますが、それでは意味がなく、なるべく地域内で再エネの発電量を増やし、それを調達して地域の暮らしもよくしていきたいと考えています。

また、キャンパス内の建物に太陽光発電を最大限導入したとしても、雨の日は太陽光発電ができないので、オンライン授業が推奨するなど天気予報に合わせて柔軟な授業運営に切り替える将来像も検討しています。そうしたときには、学生が使わない分、EVのスクールバスを雨の日に利用者が増える地域のバスとして活用できるかもしれません。ほかにも様々な形で地域交流を通じた脱酸素のコミュニティ作りをしていきたいと考えて、キャンパスに地域交流ゾーンを設ける予定であったり、脱炭素の街づくりの提案の授業を展開したりもしています」。

ここで、地域の暮らしをよりよくしながら再エネの発電量を増やすための研究をする芝浦工業大学大学院 理工学研究科の伊達好信さんから、研究内容についてお話いただきました。

「賃貸集合住宅に太陽光発電や蓄電池を設置したときの収益モデルをさいたま市内の不動産事業者の方と共同研究しています。

賃貸集合住宅に、再エネを導入した場合、オーナーの立場からすれば『そもそも、儲かるのか』という話になってしまいます。

そこで、人気のない空室に対して優先的に太陽光発電電力を送る仕組みをつくることで部屋の付加価値を高める仕組みを提案し、オーナーと居住者のコスト的なメリットを算出しています。シミュレーションの結果では、この仕組みが双方の電気代削減に貢献することが確かめられました。ただ、初期費用はかなり高いので、初期費用を回収するという想定で、屋根全部に太陽光パネルを敷き詰めたほうがいいのか部分的に設置するほうがいいのかなど、ケーススタディを行っています」

ワークショップ

若者世代だけで、2つのグループにわかれてのワークショップを行いました。

テーマは①「脱炭素に向けて考えたいこと、行動したいこと」②「さいたま市、川崎市の若者同志で、それぞれで連携してみたいこと」。

まずグループ内で改めて自己紹介をしましたが、お互いについて知ることで、思いのほか話が盛り上がり、なかなかワークショップに進まないという一場面もありました。

テーマ①「脱炭素に向けて考えたいこと、行動したいこと」では、スクールバスのEV化などの話も受け、EVについて主に話し合ったグループからは、太陽光発電システムを車の近くに設けるなどできればよいのではないか。また、このように話し合うからには、将来、車を購入する際には自分たちもEVを選ぶべきではないかという話がでました。

もう一つのグループからは、ソーラーシェアリング×AI×自動化×地域というワードがあがりました。ソーラーシェアリングをしている農地で、将来的にトラクターなどをAIで自動化して均一な質の良い農作物を作り地域の農業と脱炭素に貢献することができないか、というアイデアでした。

テーマ②の「さいたま市、川崎市の若者同志で、それぞれで連携してみたいこと」では、さいたま市は、カーシェアなどのシステムがかなり進んでるので、溝の口の周りでも同じようなことができないか、それとは別に溝の口の周辺では、脱炭素について盛んに取り組みをやっているが何かいいことをしようという人がポツポツいたとしても、みんなで集まってやったほうが大きなムーブメントになるので、さいたま市と川崎市が協力したイベントができないか、という意見が出ました。

もう一つのグループからも、イベントを実施するという同意見がでましたが、こちらは「若者フェスティバル」として環境意識の浸透を促すものにしたいという少し具体的な内容が出ました。若者限定でサステナブルな取り組みをするイベントで、参加した若者が大人になったときに子どもにどんどん連鎖していく。それが社会に浸透していけば有意義なものになるのでは、と話しました。

さいたま新都心バスターミナル見学

最後に、大宮から歩いて10分ほどの場所にある、「さいたま新都心バスターミナル」を見学。ここでは、「さいたま市スマートシティ推進事業」の一環として、シェア型マルチモビリティの実証実験を実施しています。

バスターミナル自体も、埼玉県産の木材を使った建物になっています。長距離バスなどで、さいたま市を訪れる人たちが、市内で移動する交通手段として超小型EV、電動自転車、スクーターなどを設置しています。

インターンは、特に超小型EVに興味津々で、ぜひ利用してみたい、溝の口にも設置してほしい、などの声があがりました。

交流会を終えてインターンは、意見交換をするのがとても楽しく、今後もぜひ交流する機会をつくりたい、また別の脱炭素先行地域との交流もできたら…と感想を話し合っていました。

さいたま市と川崎市の脱炭素先行地域同士の交流を通して、同じような意識をもちながらまた別の視点や知識をもって話ができたことは、インターンにとってとても充実した機会となりました。