2024年3月、武蔵溝ノ口駅南北自由通路の木質化が完了しました。
武蔵溝ノ口駅改札を出て正面の窓を埼玉県産の「サワラ」で木質化。さらに、通路には木製のベンチが設置されました。観葉植物の鉢カバーは、ナラ枯れの被害を受け伐採された生田緑地の木材を活用しています。
さらに窓面には、薄い太陽光発電シートが設置され、蓄電した電力を照明の一部に使用しています。
日本には、多くの森林がありますが、その4割は人が木を植えて育てた人工林です。しかし、その資源を有効に活用できていないという現状があります。木材を積極的に利用することは、「伐(き)って、使って、植えて、育てる」という循環に繋がります。また、木材は二酸化炭素を固定する性質があり、燃やさない限りその効果は持続します。
そうしたことから、木質化はカーボンニュートラルの実現に向けた重要な取り組みと言えます。
この木質化を記念し、大きな松ぼっくりを利用した苔玉づくりワークショップが3月16日に行われました。その様子をレポートでお届けします。
書いた人:まるっとサステナキャンプ公式
主に「まるっとサステナキャンプ」のインターンが行っている活動について記事で発信していきます。
松ぼっくり「ダイオウショウ」を使用した苔玉作り
一般的に苔玉は、草木の根を土で包み、土のまわりにコケを巻きつけたもので、気軽に室内で自然の風景を感じることができます。今回は、それをダイオウショウという大きな松ぼっくりを使って作るワークショップです。
南北自由通路の木質化を手がけた石井造園社長の石井さんを講師に迎え、午前・午後それぞれ10名が参加しました。
まずは水苔をかさの間にぎゅうぎゅうに詰めていきます。水苔が多いようにみえますが、これでも足りないほど。
この土台作りが一番重要な作業で時間がかかります。作業を続けるうちに、自然と集中力が高まり、無心になっていきます。
参加者の皆さんが作業をしている間に、石井さんからは”生きた証のタネ”というお話がありました。
「植物は、色んな方法でタネを広げます。
ある植物は綿毛を手に入れ、タンポポのように遠くまでタネを飛ばします。モミジの種は、ヘリコプターのような翼を手に入れることによって、風に乗ってより遠くまで飛んでいきます。また、オナモミという植物は、『ひっつき虫』とも言われますが、獣の毛にくっつくことによって、獣の毛が生え代わるタイミングで新たな土地に落とされます。ヤシの実は、固い殻で水に浮くタネで、隣の島に渡ります。
風に乗せてタネを運ぶ松ぼっくりは、タネを遠くまで飛ばすことができない雨の日には閉じた状態で、タネを守ります。晴れて乾燥すると開いてタネが飛んでいきます。
右が濡れた状態の松ぼっくり。笠が閉じて小さくなっている
なぜ植物はより遠くに生きた証であるタネを飛ばそうとするのでしょうか。
それはお互いに水を奪い合ったり、また日光を遮り合ったりしないためです。
人はどうでしょうか。私たちが今日生きているということは、先祖からの、またお父さんお母さんの生きた証ということでもあります。遠くに飛ばされることなく、より近くで深い愛情に守られながら、生きています。そしてまた、子どもたちの未来があるのが私たちの生きた証でもあります。
それだけではなく、人は脳が発達したことによって、お互いの記憶の中に生きた証を立てることができるなと思います。
ただし、人の記憶には限りがあります。だからこそ、記憶のなかではぜひ笑顔で思い出していただきたいです。生きた証を立てるということは記憶の中にすべり込むこと。今日、皆さんとの出会いの中で私がどんな記憶で刻み込まれていくかも楽しみです」
一つとして同じものがない苔玉が完成
お話を聞いている間に、水苔を詰める作業はほぼ終了し、松ぼっくりにミヤマラッキョウやユキヤナギなどの植物を植え付けていきます。
どうやったらバランスがいいかな、と皆さん様々な角度から松ぼっくりを見て、植えていきます。
植物を植え終えると、最後の仕上げとして苔を貼り付けていきます。
ふかふかとした苔が気持ちいい、と楽しみながら仕上げていく来場者の皆さん。
主催の石井さんによると、このワークショップを機に苔の魅力を知る人も多く、これまで何気なく通り過ぎてしまっていた苔の群生に気づくようにもなるそうです。
同じ材料を使っていても、一つとして同じものができないのが、このワークショップの面白さ。それぞれの個性があふれたかわいらしい苔玉ができあがりました。
最後に石井さんからこんなお話がありました。
「せっかく作った苔玉と長くつきあうために、ぜひ名前をつけてください。この苔玉をきっかけに、身近にある自然についても興味を持っていただけるようになると嬉しいです。
この南北自由通路の木質化のデザインはステージをイメージしているんです。このステージを使う1回目のイベントがこのワークショップでした。今後は皆さんにぜひこのステージに立っていただきたいです」
今回は、苔玉についてよく知らないという参加者の方も多くいらっしゃいましたが、ワークショップが始まると、「できあがりが想像できないからこそ楽しい」と、集中して取り組んでいました。
まるっとサステナキャンプでは、今後もこうした自然との触れ合いの場を大切にしたイベントの情報を発信していきます。